みなさん、こんにちは、
クゥーちゃんです。
今回は、発達障害の部下を持った経験のあるクゥーちゃんの体験談を綴ったブログの最終回になります。
これまでのブログ⇒大人の発達障害と特徴 発達障害の部下を持ったことがありますか?その①
大人の発達障害と特徴 発達障害の部下を持ったことがありますか?その②
発達障害の疑いのある部下M君のことを事業所の所長に相談した結果、
産業医に相談してもらえることになり、一安心したクゥーちゃんでしたが・・・
産業医から返ってきた無責任な答え
みなさんは産業医ってご存知ですか?
産業医とは、企業において労働者の健康管理等を行う医師のことを言います。
法律により、一定規模以上の事業所には産業医の選任が義務付けられています。
社員が50人以上いる企業は、衛生委員会を設置する必要があり、特定の業種においては、安全委員会も設置されなければいけません。
クゥーちゃんの勤めている会社にも安全委員会が設置されています。
産業医の仕事は、職場巡視や健康相談、休職・復職面談、ストレスチェックの実施など多岐に及び、従業員が身体的にも精神的にも健康的に働くことができるようサーポートする役割を担っているのです。
産業医ならM君のことをなんとかしてくれるはず・・・
そんな思いで所長から声がかかるのを心待ちにしていました・・・。
数日後、所長からお呼びがかかりました。
きっと、M君の件に違いありません。
期待して応接室のドアを開けましたが・・・
結論から言うと、
返ってきた答えはあいまいというか、相当期待はずれな内容でした。
まるで他人事のようだなと思いました。
ここで上司に反論しても無意味なだけ・・・
正論を振りかざしても自分より上の立場の人間には到底かないません。
正論を正論にしたいのならば、
コイツより上に行くしかないのです・・・
サラリーマンの世界はそんなものです。
臭(くさ)いものに蓋(ふた)をされた・・・
そんな感じがしました。
発達障害者が職場で仕事をしていくためには、職場全体の理解と支援が必要不可欠なのに・・
誰も助けてはくれんなぁ、まぁ、いつものことだけれど・・・悔しいなぁ・・・
クゥーちゃんは心の中で、そう、つぶやきました。
M君の本心
それから、もう一度M君と話をすることにしました。
もう一度話をして、彼の本心が聞きたかったからです。
いつものように口ごもったりせず、はっきりと彼は答えました。
あえて発達障害という言葉をオブラートに包んだまま、会話したことを覚えています。
その言葉で彼を傷つけることが、怖かったのかもしれません。
いや、怖かったのでしょう・・・それに勇気もなかった・・・
でも、
この瞬間から、自分はM君と前向きに付き合っていこうと決意しました。
発達障害の部下を持ったことを疎ましく思ったり、不運に思ったりしてしまったら、無責任な上司や産業医と同じです。
この出会いも一期一会・・・
縁あってM君と一緒の仕事をすることになったのだから、この経験は自分にとっても学びはあるはず・・・
そう考え直すことにしたのです。
職場全員でM君をサポートする
次の日から、M君をサポートする日々が始まりました。
クゥーちゃんの部署は総勢15名のスタッフで仕事をしていたのですが、M君を除いたスタッフ全員を集めてミーティングをしました。
これまでのM君に関することは全て話しましたが、ここでも発達障害という言葉は使いませんでした。
いや、使えませんでした。
うすうす勘づいているスタッフもいたので、わざわざ使わなくても・・・という気持ちもありましたし、この言葉で区別したりして、差別につながっても嫌だなという気持ちもありました。
中には、M君のこれまでのミスについて不満を持っているスタッフもいたので、言い分を聞いて個別に説得したりもしました。
発達障害は根本的に治療することはできないと言われています。しかし、周囲が協力し、普段からの対応法を考えることによって、本人が生きやすい環境を作ることは可能なはずです。
このミーティングを通じて全員に協力を呼びかけました。
職場におけるM君の行動は、ADHD(注意欠如・多動性障害)の特徴と類似していたため、
職場のADHD3つの特徴と言われている
① 多動性:せっかちでイライラしやすく、終わっていないのに次の作業に移ろうとする
② 衝動性:相談しないで勝手に決めてしまう
③ 不注意さ:片付けが不得意、時間管理ができない、忘れ物が多い
この3点を少しでも改善できないかと考えM君をサポートしていくことにしました。
M君をサーポートする上で具体的に行ったことは以下のようなことです。
①一日の仕事のスケジュールを表にして携帯させる。
M君が混乱しないように仕事のスケジュールを書き出し紙面化して携帯させるようにしました。作業は一つ一つ細かく区切り、同時進行させないように配慮しました。
周りのスタッフにもM君へ次々と仕事を振らないように指示しました。
仕事が一つ完了するごとに用紙にレ点でチェックさせるようにもしました。
②常にメモをとるようにさせる
忘れてしまうことがないように常にメモをとるように言いました。
M君は愚直に言うことを聞き、一生懸命メモをとっていたのを今でも覚えています。
まぁ、それでも忘れることもあったのですが(笑)
③衝動的に行動を起こさないように全員で注意する。
M君が衝動的に行動を起こさないように全員で注意を払うように心がけました。
終業10分前には必ず上司である自分とのコミニュケーションの時間を設けて、
どんな内容でも良いのでM君の言葉で話させるようにしました。
このかいあってか、以前よりも仕事のことについて相談してくれることが増え、
衝動的な行動も減りました。
④厳しく指導し、おもいっきり褒める。
M君がミスをした時は、甘やかしたりせず、他のスタッフと同じように厳しく指導しました。
M君が素晴らしいなって思ったのは、厳しい指導に一度も弱音を吐かなかったことです。
彼は心からこの仕事が好きなんだなって思いました。
そのかわり、彼が仕事で結果を残した時には、おもいっきり褒めるようにしました。
M君が生き生きと仕事ができるように職場のスタッフ全員で考えて、彼をサポートしたわけですが、専門医からアドバイスを受けたわけでもありませんし、劇的に効果があったかと聞かれれば、残念ながらNOと言わざるを得ません。
全員の協力のおかげで、以前よりはミスは減りましたが、それでも何かしら問題を起こしてしまうことがあり、一朝一夕にはいかないものだと痛感させられました。
ただ、ひとつ確実に言えることは、
M君は以前に比べて格段に明るくなったということです。
M君だけでなく、部署の全体の雰囲気が明るくなりました。
以前はM君が何か失敗をすると殺気だっていた職場が
と、笑ってすませる場面が増えたように感じました。
まぁ、上司としては笑ってすませられない失敗も多々ありましたが(笑)
M君が明るく仕事をするようになり、職場としては一歩前進したと言えるでしょうが、
これが根本的な解決になったか?と聞かれたら、決してそうではありません。
本来ならば、会社全体が発達障害と向き合い、社内でM君が力を発揮できるように努力をすべきなのです。
クゥーちゃんは、M君の障害がADHD(注意欠如・多動性障害)だと仮定して対応してきました。
ADHDの人には、その特性ゆえに向いている職業があります。
① 医師・看護師などの医療機関。消防士や警察官などの公務員。
② コールセンター業務や営業(セールス)。
③ アーティストやエンターテイナー、スタイリスト、イラストレーターなど創造的な仕事。
④ 建築関係や自動車整備士、、画家、研究者
などです。
社内においても、その特性が発揮できる仕事を探し出し、それを任せることによって、M君の未来が切り開けるはずです。
もう一つの問題は大人の発達障害診療を受け入れている医療機関はまだ少ないという現実です。
それに加え、大人の発達障害の確定診断を行うことは、医師にとってもかなり難しいそうです。
うちの会社の産業医が二の足を踏んだのも致し方ないことだったのかもしれません。
いずれにしろ大人の発達障害は社会問題になりつつあるのですから、発達障害者を取り巻く社会環境を変える努力を私たちはすべきだと、M君との出会いを通じて感じたわけです。
M君との別れ
去年の9月、長野県の事業所への転勤が決まり、M君と別れることになりました。
思い返せば、一年という短い期間でした。
M君のような部下を持ったのは初めてのことで、自分自身、とまどいや混乱もありましたが、
彼の持つ障害と、真っ直ぐに向かい合うことで得られた経験や学びは大変貴重なものになりました。
当初は、
やっかいな部下を持ってしまった・・・
俺はなんて不運なんだ!
と、自己中心的な考えに支配されていたクゥーちゃんでしたが、
M君と仕事をしていくうちに考えが変わりました。
発達障害の原因は、現在の医学ではまだはっきりと解明されていません。
発達障害は、脳の前頭前野部分の機能異常だと言われており、遺伝要因が強いとされていますが、妊娠中の喫煙や受動喫煙、妊娠中の飲酒など環境要因から引き起こされるとも言われています。
いずれにしろ、
M君が発達障害になったのは、M君のせいではありません。
一番苦しい思いをして、つらいのはM君なのですから・・・
一つ気がかりなことは、私が去った後のことです。
後任の上司となる方へ引き継ぎをした時、M君のことを洗いざらい話した後、
「でも、彼は人間的には思いやりがあって本当にいい子ですから、よろしくご指導お願いします」
と頭を下げました。
しっかりと引き継ぎをしたつもりです。
転勤が決まってしまえば、自分にできることはこれくらいのことしかありません・・・
苦労や困難をM君が乗り越えてくれることを願うばかりです。
最後にM君と話をしました。
いいか、定期異動の送別会の幹事をするときは、異動する人全員の予定を確認してから日程を決めること!分かりましたか(笑)?
最後にM君と握手をしてお別れしました。
話にオチがついたついたところで、
発達障害の部下を持ったクゥーちゃんの体験談を終わりにしたいと思います。
この体験談が、発達障害をかかえている方、職場に発達障害の方がいてお悩みの方へ少しでも参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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